今年は関東地方にも大雪が降りました。雪が降った後のことを考えると、ウンザリします。だから、大人はみんな雪が嫌いです。しかし、子どもは雪が大好きで、雪が降りだすと、嬉しくなります。(犬も昔は大好きでしたが、今は過保護の室内犬が多くなり、「雪やコンコン・・・犬は喜び庭駆けまわり」とはいかなくなっているようです。)シンシンと降る雪は、子どもにとって、とても神秘的で、幻想的なものでしょう。しかも、雪合戦やソリ遊びなど、楽しい遊びが目に浮かびます。後のことなど考えません。大人は、雪が降ると大変だと考えます。その通りなのですが、幼稚園の先生は、大変だから雪の日はお休みになればいいなーと、思うようでは、幼稚園の先生失格です。子ども達と、日常とは違った遊びがいっぱいできると喜ばなければダメです。
雪は3歳、4歳にとっては初めての経験かも知れません。生まれて初めて雪を見た時の感動って、どうなんでしょう。考えるだけでワクワクします。寒い日でした。3歳児のクラスで子ども達に絵本を読んであげていた時、静かに絵本を見つめていた子どもの中から、誰かが「あっ!」と外を見て声をあげました。みんなも、絵本から目を外に向け「あっと」言ったあと、声も上げず、黙ってじっと外を見つめていました。いつの間にか、外は雪が降り出し、園庭がうっすらと白くなっていました。本当に心が動いた時は、声にならないのです。しばらく、ガラス戸に顔を付けるようにしてジーっと見ていました。こんな時、絵本も園長も、眼中に入らないのです。少し経ってから、一人の子が私の方を振り向いて「園長先生、雪!」と言うと、みんな「雪だ!雪だ!」と騒ぎだしました。私が「雪、触ってみる?」と言うと、みんな外に出て、手をかざし、チラチラ降る雪にクルクル回って、踊っているようでした。冬の空気と掌に落ちた冷たい雪の感覚、こういう体験が感性を育てるのです。
ミュージカルスターの石丸幹二が、毎日毎日舞台に立ち、あまりの忙しさに、自分を見失いそうになって、休養を取りました。ある日の夕方、西の空に真赤な夕日が落ちていくのを見て、深く感動しました。いつも夕方は舞台や稽古が始まる頃であって、夕日など見たこともなかったのです。それから一年間休養をとり、感動する心を取り戻したとのことでした。
やはり、人は感性を豊かに、感動する心を持たなければなりません。子ども時代は、何でも新鮮でフレッシュに感じられる時代です。音楽が上手にできること、走るのが早いということより、音を感じられること、躍動する喜びを感じることが感性を豊かにし、情緒・情操を豊かにします。こういうことが土台になって、人格が、人間の基礎がしっかりとできるのではないでしょうか。