「少し寂しく、大いに嬉しい事」

(2024.2.1)

年少のA君は、登園すると毎朝事務所を覗いて「園長先生来てる?」と私を探しに来る。私がいない日は、肩を落としガッカリしているとの事。お母さんからも、「家に帰ると、『園長先生来たよ!』と大喜びし、『今日は来なかった』とがっかりしているのです。」と聞いて、私は嬉しいのと同時に、複雑な気持ちになった。私の姿を見つけると、すぐに私の手を握り、離さなかった。私を独占したくて、誰もいない玄関横の椅子に私を引っ張って行き、私の膝に乗って、難解な口調で、まくし立て話した。私は理解不能のまま、あいづちを打った。トイレに行く時も「一緒に行こう」と手を離さなかった。ある時は、子どもの用のブースに「一緒に入ろう」と言われた。体の大きな私が入れるはずないし、さすがに固辞した。


私にベッタリは良くないので、他の子を誘って一緒に遊ぶようにしたり、集団で遊ぶように仕向けた。それでもなかなか私から離れなかったが、運動会を過ぎた頃から、急に活動的になり、友達関係も広がり、園内のあちらこちらで遊んでいる姿が見かけられるようになった。体も一回り大きくなって、言葉もはっきりしてきた。私より友達と遊ぶ方が楽しそうになった。たった半年余りで大きく成長した。私は影が薄くなった。少し寂しかったが、とても嬉しかった。


それにしても、子どもの成長は素晴らしい。3歳から5歳の成長は急激である。だから、幼児期こそ大切である。スキャモンの成長曲線によると、3歳までに脳と神経は急成長することが示されている。6歳で90%、12歳でほぼ完成する。幼児期に、知識の埋め込みや、丸暗記など片寄った経験をすることでなく、良質な環境の中で、沢山の経験をし、友と関わり、豊かな情報を与えることが、言葉を育て、想像力や創造する力を育てる。


子どもは成長する。子育ての喜びはそこにある。子どもを愛し愛される喜びは、何事にも代えられない。昔の人も「銀も金も玉も、何にせむに、勝れる宝、子にしかめやも」と歌っている。子どもがいることは、未来を明るくし、人生を豊かにする。チャイルドペナルテイではなく、プライズだ。どうか受験戦争の悪夢に陥り、イライラ、ハラハラしないで、ゆったり心豊かに、楽しく子育てしよう。それが、親と子どもの人生を豊かにする。